有限会社 露満堂
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新聞記事より転載

『毎日新聞』2005年11月12日夕刊掲載

鋳物のストーブ屋さんは、一年中、製造、修理、販売と忙しい。(ヤルカンド)
オート三輪のリンタクは庶民の足だ。近場なら1元(約14円)。バスは〇・五元。(ヤルカンド)
手漉き紙職人のマスマ・ホンさん。桑の木の繊維で一辺が四〇〜五〇センチの紙を作る。(ホータン)
エイティガール寺院の前にある楽器店。店頭ですばらしい音色を聴かせてくれる。(カシュガル)
日曜バザールの一角にある青空理髪店。(ホータン)
 
新疆ウイグル自治区
時を超え行き交う人
その昔東西交易で栄えたシルクロード。天山南路と西域南道の合流地点カシュガルは、中国新疆ウイグル第二の都会である。15世紀に建てられたイスラム教のエイティガール寺院が今も街の中心だ。
モスクの門前に続く職人街の狭い倉庫で、床に正座しておじぎをしている人がいた。イスラム教徒は一日五回、メッカの方向に礼拝するという。また聖なる金曜日、住宅地で膝に敷く小さな絨毯を抱えてモスクに急ぐ男たちに出会った。
街を歩いていると、目だけを開け、頭からスッポリと布で覆っている女性を見かける。布は無地のコーヒー色が目立つが黒や柄物もある。もともと女性は外で肌を見せないイスラム社会の風習に由来するようだが、近ごろではスカーフで髪を覆うだけの人が多い。
ヤルカンドのバザールでは、鋳物のストーブを売る人、病状をきいて何種もの生薬を混ぜ粉末状に砕いている人、路上で生きた羊を売っている人もいた。地元の人を何人も乗せたリンタクやロバ車が人波をぬって走っている。
ヤルカンドからホータンまでタクシーをチャーターし、タクラマカン砂漠の南縁を走った。古代の西域南道の一部で、いまや国道三一五号線の快適な舗装道路だ。夕暮れ迫るころ風が強くなり、道路をまたいで砂ぼこりが濁流のように渡っていく。センターラインも見えなくなり、車は速度を落としてようやくオアシスの街に到着した。
ホータンで縁者を大勢集めて、婚礼のご馳走をふるまっている家があった。その晩お婿さんが迎えにくるそうで、近所の人たちも総出で手伝っている。通りかかった見ず知らずの私たちまでお相伴にあずかった。
写真・文 片岡 露満(出版編集者)

 
 
 

『毎日新聞』1999年7月24日夕刊掲載

にぎわうクチャの金曜バザー 旅のなごりをしむ乗客たち ウイグル族の親子 電車を見送る人々 完成前に開業したアクス駅
にぎわうクチャの金曜バザール。モスクの前では食べ物や農産物が売られていた 終点のウルムチも間近、旅のなごりを惜しむ乗客たち カシュガル市内のイスラム寺院に通じる職人街で見かけたウイグル族の親子 アクス駅を出発するウルムチ行きの直快列車を見送る人々
駅舎の完成前に開業したアクス駅。待合室も乗務員室もテント張り
 
新疆ウイグル自治区
横断鉄道の建設着々
かつてはシルクロードを行く隊商の要路だった天山南路で、いま中国・新疆ウイグル自治区を横断する鉄道の建設が進んでいる。自治区の首都ウルムチからコルラまでは鉄道が通っていたが、コルラからパキスタンに国境を接するカシュガルまでの全長975キロ、総工費62億元の国家プロジェクトだ。この5月、突貫工事中のカシュガルの駅舎をみてから、アクスまで砂漠の一本道をタクシーで飛ばした。すでに鉄道線路が出来上がっており、空の貨物列車の試運転を2度見かけた。線路の下にはところどころに土砂を逃がすようなトンネルが造られて、砂漠の自然の力の怖さを感じさせる。アクスで1泊。2月に開業したばかりの「直快列車」でクチャに向かった。えんえんと続く砂漠の単調を破るかのように、オアシス都市が現れる。クチャではキジル千仏洞などの遺跡や金曜バザールを駆け足でまわった。 そこからウルムチまでは19時間の汽車の旅。突然紛れ込んだ日本人客がもの珍しいのか、たちまち好奇心のとりことなった。「抗日戦争を知っているか?」「戦争中は子供だったが大人になってから侵略戦争とわかって中国に済まなく思っている」。こちらの応答は歯切れが悪い。「あんたもおれたちも老百姓(庶民)だから心配無用だ」と老夫婦がフォローしてくれた。ご主人はタクラマカン砂漠の油田開発にかかわった元技師で、病身の奥さんにときどき指圧を施したり、薬の面倒を見ていた。終点のウルムチ到着は12時少し前だった。乗客たちは2日がかりの長旅を感じさせない足取りで、砂漠とはうってかわった都会の雑踏に消えた。全線開通の見込みは、建国50周年を迎える10月以降という。
写真・文 片岡 露満(出版編集者)